本ゼミナールでは「まちづくり・地域おこし」を進める上で
 欠かすことのできない都市計画や地域振興のための諸制度について
 理解を深めるとともに,具体的な各種施設計画や交通・物流システムの
 開発などを行うための,知識や技術を修得することを目的としている

   
 


 本専門ゼミナールで対象とする分野は,地域商店街の立地問題や都市の環境問題など都市・地域計画に関わる分野,さらには企業の物流システムや地域間の輸送システムなど交通システム全般に関わる分野である。
 今日各地において地域商業の活性化を目指した「まちづくり(都市再生)」が大きな社会的課題となっている。これまで地域商業の問題は,大型店の出店規制などに見られるように,商業者間の調整や構造改善といった商業政策上の問題として論じられることが多かった。しかしながら近年,地域商業の衰退に伴って生じる都市空間の再整備や交通問題,さらにはコミュニティの問題など新たな問題が指摘され,都市計画や地域計画上の重要かつ緊急な問題としての認識が広まっている。
 一方「まちづくり」や「地域おこし」を進めるためには流通システムの改善も不可欠である。特に近年注目されているのが「物流システム(ビジネス・ロジスティックス)」の開発である。これまで企業活動において,物流の分野は「暗黒大陸」と呼ばれてきた。このことは物流の範囲が,輸送活動や在庫管理・生産管理といった技術的な分野から,顧客管理やマーケティングの分野まで極めて多岐・広範囲に亙るものであり,全社的コストの把握が難しいことによる。また物流は,単に一企業内の内部的なシステムに依存して展開されることよりも,他企業や社会的産業基盤に依存することが多く,全体像が意識され難いことも一因といえる。しかしながら近年,情報技術の進展によって,これらの問題は次第に改善されつつあり,物流効率化は企業活動の重要な利益源であるとの認識から,システムの効率性や改善効果に対する期待が高まっている。
 また近年,各地において「地域物流(ソーシャル・ロジスティックス)」が注目を浴びている。このことは農水産品の出荷地域である北海道など地方都市における輸送コストの改善や輸送技術の向上,さらには静脈物流など様々な課題を含んでいる。このような「地域物流」のあり方を考える場合,それぞれ個々の企業体において課題の解決を図るのではなく地域全体の社会的課題として解決を図ろうとするところに特徴がある。


 本ゼミナールにおいては都市・地域問題等の現代的諸課題を多面的かつ実際的に学修・考察し,卒業研究として体系的に取り纏めることを行う。この狙いは,課題の発見から分析手法の検討,調査の企画・実施,集計・解析作業,結果の取り纏めに至る一連の過程を自らのアイデアと行動で展開し,それぞれの段階において必要とされる各種の方法論を実践的に体得するところにある。このため本ゼミナールでは,フィールド・ワークを重視すると共にグループ討議による学修を行う。


専門ゼミナールI
 専門ゼミナールTにおいては,分析のツールである各種統計ソフトを用いた基礎演習を行う。特に本ゼミナールは調査分析,発表・報告を通じ,情報機器を活用するところから,これらの習熟に努める。また地域の課題を理解するため,地域商業や「まちづくり」に関する文献の輪読を行う。
●Word,Excel,Power,HTMLによる簡単なホームページ作成等
●参考文献;矢作弘著「大型店とまちづくり」岩波新書
 中沢孝夫著「地域人とまちづくり」講談社現代新書等

専門ゼミナールII〜V
 ゼミナールII・IIIにおいては,フィールド・ワークの基礎的知識として,調査の企画や方法・サンプリングの方法など統計調査法の全般について学ぶとともに,物流システム・地域計画の各分野毎に個別テーマを設定し,体系的・専門的な学修を行う。このためには,各自それぞれ文献探索や課題の整理などを行うと共に,主に北海道を対象として,具体的な事例を対象にData分析を行う。また参加者全員による討論形式によって学修を進める。
 ゼミナールIV・Vにおいては,これまでのゼミナールでの理解を基に,グループ別に個別研究テーマを設定し,研究調査の企画から実施までを体系的に行い,その成果を「卒業研究論文」として完結させる。研究調査は,フィールド・ワークを中心とするが,必ずしも論文形式にこだわらず,研究テーマによってはコンピュータによるシステム開発や,特定地域を対象とした具体的な計画案の策定など,幅広い研究展開を期待する。
 個別テーマを分野ごとに例示すれば以下の通りである。
「まちづくり」の分野では
●“地域商業の立地分析と計画論”,“買物行動分析と商業施設計画”
●“地域コミュニティーの形成とコミュニティビジネスの可能性”
「交通・物流システム」の分野においては
●“地域交通情報システムの計画論”,“地域物流システムの課題と政策論”
●“企業内物流システムの分析と開発”,“都市交通システムの分析と政策論” 他





千葉博正
(ちば ひろまさ)

【出身・経歴】
 北海道大学工学部卒,工学部及び農学部研究生,北大工学部助手,助教授,北海道自動車短大教授を経て,札幌大学教授(工学博士)大学院兼務。
 出身は岩手県,いわゆる「団塊の世代」であるが,田舎町で育ったせいかガリガリの受験勉強には縁が無い。北のリリシズムに憧れて津軽海峡を渡る。学生時代は学園紛争真っ只中,毎日のように大学上空をヘリコプターが旋回して講義は休講続きの状態であった。当時住んでいた学生寮の寮長などを務める。寮の中では毎日ように政治や社会問題について議論が繰り広げられた。理系だ文系だと言っていられない。その為いろんな分野の本を読むことになり,これが今日大いに役立っている。学問のスタンスは「実践派」,専門ゼミナールもこれを基本としたい。

【専門分野】
 都市・交通システムの研究開発。専門委員として各地の都市交通計画,地域振興計画および商業活性化計画の策定に参画。

【著書】
●「新しい時代の地域開発・都市開発プロジェクト」(土木学会編),1988
●「成熟都市のシステムデザイン」北方圏センター,1989
●「地下都市−ジオフロントへの挑戦−」清文社,1989
●「ニューフロンテア 地下空間」技報堂出版(土木学会編),1990
●「地区交通」国民科学社(土木学会編),1992,韓国語訳出版 1997
●「経営管理のためのプログラミング技法」北海道総合出版,1993

【公職等】
●日本商店街学会常任理事,
●−日本物流学会理事北海道支部長
●日本ディレクトリ学会運営委員
●商店街活性化シニア・アドバイザー(中小企業事業団委嘱)
●(社)寒地港湾技術研究センター監事
●(財)巌鷲寮理事

【委員会】
●中心市街地商店街活性化推進計画策定委員会(北海道)平成10年〜11年
●中心市街地活性化基本計画策定委員会(帯広市)平成10年〜11年
●滝野すずらん丘陵公園利用活性化懇談会座長(北海道開発局)平成10年〜12年
●小ロット物流システム検討委員会(北海道)平成10年〜12年
●札幌市景観審議会委員(札幌市)平成10年〜16年
●札幌市地方社会福祉審議会(札幌市)平成11年〜
●小樽市都市計画審議会会長(小樽市)平成12年〜16年
●伊達市中心市街地活性化基本計画検討委員会委員長(伊達市)平成12年〜平成13年
●江別市中心市街地活性化基本計画策定委員会委員長(江別市)平成12年〜14年
●札幌市交通バリアフリー基本構想策定協議会会長(札幌市)平成14年〜15年
●札幌市都心交通検討会副会長・同計画策定委員会部会長(札幌市)平成14年〜16年
●北海道総合開発委員会臨時委員(北海道)平成18年〜