会計情報システム(コンピュータ会計)と管理会計の統合研究
   
 



 現代では,高性能パソコンの普及とともに,政府・自治体・企業などさまざまな会計がコンピュータ化されています。家庭の会計である家計簿のソフトが組み込まれているパソコンさえあります。このような会計のコンピュータ化を研究するものが会計情報システムです。
 会計情報システムの領域は,大は国レベルから小は個人レベルまで,会計全般にわたる非常に広いものです。しかし,経営学部は企業経営に関する学問を学ぶ学部です。したがって,本ゼミナールでは,企業における会計情報システムの研究,とくに企業経営の現場で使われる管理会計における会計情報システムの展開を課題として学習していきます。現在,大企業はもとより,中小企業も含め,ほぼすべての企業の会計がコンピュータ化されているといっても過言ではありません。企業会計の実務の場面ではコンピュータによって会計処理が行われることは当たり前のことなのです。もちろん,会計の情報システム化は,単なる伝統的な簿記会計(複式簿記による期間損益計算)のコンピュータ化(EDP)による会計処理の効率化,迅速化という意味をもつだけではありません。とくに管理会計の分野では,コンピュータのもつ情報処理能力を最大限にいかすように,企業のさまざまな計画や管理に役立つ各種の会計情報を提供していくことが求められています。つまり,会計情報システムは,現代の企業経営にとって必須のアイテムとなっているといえます。
 会計の情報システム化は,ほぼ年代別に,1950年代のEDPS(電子的データ処理システム),60年代のMIS(経営情報システム),70年代のDSS(意思決定支援システム),80年代のES(エキスパート・システム)というように展開されてきています。とくに,90年代以降は,インターネットの普及により,会計情報システムは急速に,また多方向同時に展開しています。こうした歴史的展開をふまえて,現代の企業における管理会計の情報システム化はどうあるべきか,また将来においてどのように発展していくのかを研究していくことが本ゼミナールの課題です。
 また,ゼミナールは,多人数の学生に対する一方的な講義となりがちな大学の授業のなかで,教授と学生が,また学生どうしが直接意見をかわし,親しくふれあうことのできる数少ない少人数の授業となっています。その意味で,教室での勉強だけでなく,コンパや合宿,研究室での雑談なども含めてコミュニケーションの場,人間形成の場としてゼミナールを活用していきたいと思っています。


 本ゼミナールは,ゼミ長を中心としてゼミナール構成員の主体的参加によって運営されています。合宿やコンパの企画・実行なども学生の仕事です。学生諸君は,授業の時間だけでなくゼミナールの運営を通じて自分たちでゼミナールを作り上げていっているのです。こうした経験は,学習面だけでなく人間的な面での学生諸君の成長になっていると思いますし,ゼミナールの和を作る上でも役に立っていると思います。学習面でもグループ内の和があればより成果上がりますし,その意味でも良い雰囲気を作り上げるように努力しています。
 学習面では,学生のさまざまな興味に対応できるように,いろいろなテーマを設定しています。会計の初心者でも学習面でつまずかないように,まず基本的なところからはじめ,興味に応じてより高度な内容に進めていけるプログラムを用意しています。そのため,学習面から途中でドロップアウトする学生もなく,4年時には学習の成果の集大成として,テーマはさまざまですが,それぞれ学部の卒論として十分なレベルに達した論文を完成させています。


 2年生のゼミナールTでは企業における会計情報システムを研究する基礎として,テキストを通じて会計情報システムの概観を勉強するとともに,管理会計の概要を学習していきます。形態としては,数人のグループによるレポート発表の形式で行います。また,コンペ形式で,同じ課題を各グループで発表し相互評価をしてもらうこともあります。発表はパワーポイントを使って行いますので,パワーポイントの基本操作も学習していきます。また,その学習の成果は2月はじめに行う予定の合宿で発表してもらいます。なお,学生の要求があれば,簿記の検定やコンピュータソフトなどについての勉強をサブゼミ形式で行うこともあります。
 ゼミナールII・IIIでは,最初はゼミナールIでの学習の続きとして基礎的な理解を深めていきます。次に,いくつかのテーマを設けて(標準原価計算,予算管理,経営分析,キャッシュフロー会計など)文献の研究とコンピュータによる実習を通じて,管理会計の詳細と,コンピュータ会計の管理会計における適用を研究していきます。発表は,ゼミナールTと同様,数人のグループによるレポート発表の形式で,パワーポイントに加えてエクセルなどを使って行っていきます(なお,グループ分けは新たに行う予定です)。なお,合宿では,2年生の発表に対して,質問とアドバイスをするとともに,その評価をしてもらいます。
 ゼミナールIV・Vでは,これまでのゼミナールの学習をさらに深めるとともに,卒業論文の作成指導を中心に進めていきます。まず,春学期は,卒業論文のテーマ決めのために,いくつかの課題のなかから(減損会計・企業結合会計・活動基準原価計算(ABC)と活動基準管理(ABM)・バランススコアカード(BSC)・企業戦略と会計・DSSとES・XBRL(インターネット財務公開)・環境会計・ブランド価値評価など)ひとつを各人選び,個人発表の形式でレポートしてもらいます。その後,卒論のテーマ決めから,参考文献選び,章割り,下書き,清書と各段階に応じて卒論指導を行っていきます。なお,合宿では,3年次と同様,2年生の発表に対して,質問とアドバイスをするとともに,その評価をしてもらいますが,4年生にとっては卒業旅行の意味ももっています。





小野 保之
(おの やすゆき)

【出身】横浜市
【経歴】明治大学大学院商学研究科博士後期課程修了(最終学歴)
【趣味】ゴルフほか
【モットー】なにごとにも一生懸命
【研究テーマ】会計情報システムの研究(インターネットと会計など)