少子・高齢化,消費の個性化・多様化など,企業をとりまく環境はかつてないスピードで移り変わっています。しかし,そのめまぐるしい変化を作り出しているのは実は私達自身です。両親の世代が「一服する」ときには,コーヒーを飲んでいたのに何故か私達はペットボトルのお茶を飲んでいる。どうしてこのような変化が起きてしまったのか?毎日の生活のなかで見過しがちな身近で細かな変化に気づき,みんなで紹介しあい,その変化の理由や原因について語り合う,それがこのゼミで毎回行っていることです。
たとえば,新しくオープンしたショッピングセンターのある売り場(実演でお菓子を販売している)の人気があるのは,何故か?他の店では何故同じことができないのか?同じようなことをやっている店とどこが違うのか?何よりも,その店の存在を自分はどうして知ったのか?その店に対する自分自身の評価はどうか?友人などにその店のことについて紹介したか?などについて話し合いたいのです。
このため,いわゆる勉強のできる人がこのゼミに向いているとは限りません。毎日,ベッドから起き上がり,朝食を食べ,大学に行き,友達と教室で出会い,昼食を食べ,また少し勉強をした後に地下鉄に乗ってアルバイトで出かけ,自宅で夕食を食べてベッドで寝る。このような日常生活のなかで,ある日,「なぜ,あのつぶれた居酒屋があった場所にあのスープカレーの店が入ったのか?」「なぜ,あのような接客をするのか?」ということを考え,それを言葉にして疑問や答えをゼミの仲間に投げかけてみる。また,ゼミの仲間もこの疑問に対して応えて行くようにするのが私のゼミです。
ですから,ある意味で「日常生活で見つけた様々な変化を自分の言葉で表現する訓練の場」というのが,このゼミを最も特徴づけています。
このような話し合いを通じて,難しい専門書を読み論文やレポートを書いて身に着ける「経営学」だけではなく,「社会や生活を経営の視点から見直す」習慣を身に着けてもらいたいと思います。ただし,「経営学」の専門家を目指したいという人もおりますので,そのような人にも個別指導に応じています。
この自分達の生活を意識したゼミの運営は,かなりの部分,就職に強い学生やたくましく生きることのできる学生を育てることを意識しています。このため,元気で明るく,失敗を経験として踏み台にできる人の集まりにしたい,というのがこれまでのゼミの努力目標でした。また,自分発見につながるような心理ゲームを通じた話し合いなども頻繁に行ってきました。このような試みが結果として,就職で成功できるような学生を送り出すことにも成果をみせつつあると感じています。これまでのゼミ生の就職先は,北洋銀行,北海道漁連,ツルハ,スズケン,北一硝子,音更農協,ニトリ,ホーマックなど道内で広く名を知られた会社から,自分で居酒屋を創業し,現在は2店舗を経営して頑張っている学生もいて,多士済々です。
基本的には,二年次から三年次の春学期までは集まった学生の興味や関心,教員が現在抱えている研究テーマ,各種のプロジェクトに合わせてゼミは運営されます。2〜3年前は自治体との共同研究で農家民泊の研究プロジェクトを行っていたため,学生と一緒に農家を訪ねたり,自治体職員とマチの活性化について話し合ったりしました。最近は温泉地の活性化に関するプロジェクトに関わっているため,学生と一緒に道内各地の温泉地を訪ね,関係者と話し合いを行っています。例えば,昨年は洞爺湖温泉で販売している「おみくじ」について話し合いました。この時,参加した学生の一人が「お守りにして販売しては?」というアドバイスをしましたが,洞爺湖温泉の人が喜び,今年から販売することが決まりました。
三年次の秋学期から,四年次にかけては就職体制を強化します。「我が家の一大事」の時期です。具体的には,三年次の秋学期は心理テストなど,自己発見につながるような内容を大幅に増やします。各種のアンケートやゲームなどを実際にやって,遊び感覚で自分自身を見直してもらいます。三年次の期末試験が終わると同時に,就職活動体制がスタート,四年次の夏まで,都度,ゼミ生と話し合う「オープン・ドア」体制となります。エントリシートの書き方など様々な話し合いやアドバイスを行いながら,みんなが立派な社会人として卒業できるために話し合う準備期間となります。四年次の秋学期はまとめの時期です。卒論やレポート,自由課題などに取り組みながら,学生生活を自分なりに満足できるものにしていってもらいます。
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