財務会計論(財務諸表の作成基準に関する研究)
   
 



 財務諸表に企業経済活動を数値化する過程が会計の対象です。
 理論的には,この会計を,管理会計と財務会計という二つの領域に区分して考えるのが,今のところ一般的で,この区分でいくと,このゼミは財務会計の領域に関する諸問題を検討します。
 予算や計画を立て業績の判断をするために,会計を企業の経営管理に役立つよう用いる場合,この領域を管理会計と呼びますが,これと対比すると,財務会計は,経営者の責任で経営の状況を,企業を取り巻く利害関係者に報告するために会計を用いる領域をさします。
 企業は,株主から資金を集め,銀行などから資金を借り,地域に立地して生産活動を行い,取引先と売買をし財やサービスを消費者に提供し,余剰が出れば国や地方に税を納め株主に配当を行います。
 広範な利害関係者との間で企業は成り立っているので,特定の相手に偏った報告や偽りの報告は許されないことになります。そこで,情報提供の真実性や公平性の基準が必要となります。企業会計原則や商法,証券取引法,税法などを学ばなければなりません。
 ここ十数年の間に,金融の自由化とか国際化という会計環境の変化を動機として,この領域はドラスティックに変化をしました。
 個別の企業の財務諸表よりもグループの連結財務諸表が重視されるようになり,従来の損益計算に加えてキャッシュフローが重視されるようになりました。実物財の増減よりも株など金融商品の含み損益の開示,かくれ債務といわれた退職年金債務,固定資産の価値変動(減損)やブランド価値といった,従来財務諸表に表示されなかったものがされるようになり,取得原価もさることながら時価とか市場価格が重視されるようになってきました。
 このゼミでは,どうしてこのように変化してきたのか,この変化が企業の経済活動にどのような影響を及ぼすのか,また企業会計にとってどのような問題が解決されどのような問題が発生しているのか,そのことが結局人々の経済生活にいかなる影響を与えるのか,そういうことを考えるために段階的に学習を進めていきます。


 会計の知識のない人もそれなりに,簿記の資格をもった人もそれなりに,将来直接的にか間接的にか関わることになる企業経済活動の資金的側面の分析視点を養うことができます。セールスになるかどうかはわかりませんが,それがポイントです。


 変化の激しい今日の会計問題の解明に立ち向かえるように,初歩的な学習から徐々に力をつけて,最終的に自分の言葉で論文をまとめることができるように計画を立てています。
 二年次では,半期を通じて,財務諸表を作成する練習を重ね,その構成要素や内容を読み取れるように演習をします。
 三年次では,春学期は,会計の基礎的文献を輪読することによって会計用語の確認や追加資料を用いて検討をします。秋学期には,ごく近年の会計問題をいくつか選び,それぞれをグループ(4〜5名)で担当し,一テーマにつき一ヶ月ほどかけて報告と質疑応答をし内容の理解を深めていきます。そのなかから,学期末に一つのテーマに絞って,ゼミ員全員でそれに関する小論文をまとめ,合宿のさいに二年生と四年生を前に全員で報告をしています。(ここでの質疑応答は学生らしくて結構面白いです。)ちなみに,この数年検討してきたテーマを列挙しておくと「キャッシュフロー計算書」「年金会計」「連結会計」「金融商品」「減損会計」「自己株式」などです。
 四年次では,就職活動とバランスをとりながら,各自の意見を卒業論文としてまとめる作業に入ります。幾つかの文献を読み一つの問題について意見の違いを整理し,理論的検討を加えて自分の意見をまとめる方法と有価証券報告書などによって経営分析の指標を自分で作成し,実証的検討をする方法との,いずれかを選択してもらっています。
 学期の節目節目にコンパなどで息抜きをしながら,これまではほぼ全員このような作業をこなしてきました。





佐藤 芳次
(さとう よしつぐ)

【出身・経歴・研究テーマなど】
 出身は北海道,旭川の隣の鷹栖町。
昭和51年 明治大学大学院経営学研究科博士課程単位取得。
 最初の赴任地は熊本。そこで9年教員生活をして昭和62年から札幌大学。大学院からずっと財務会計の評価論をテーマに研究しています。

【趣味】
スポーツ(最近はもっぱら)観戦。

【社会活動,社会貢献,対外活動など】
学外では,現在,日本会計研究学会の委員や中小企業・ベンチャービジネスコンソーシアムの役員などをしています。