地球環境問題と環境経営
   
 



 ゼミナールは,一方的になりやすい講義と違い,双方向的に学生同士の間,学生と教授との間で報告や討論をやり取りします。そのためには,各自がまずゼミナールに『参加』するため事前にテーマについて情報を集め,整理し,報告のレジュメを作成するなどの準備が必要となります。これは社会にでてから必ず遭遇することが予想される諸問題を解決する場合の良い事前訓練ともなります。ゼミナールは,充分準備してからゼミナールに『参加』して,他人の言っていることを理解し,自分の考えをまとめ,それを発表できるようになる訓練をする,大学の教育の中で最も基本的かつ重要なものです。またこれらは,就職活動で最近の多くの企業が重視している「コミュニケーション能力」そのものなのです。
 さらにこれらは,就職のみならず社会生活一般でも重要なものです。特に最近は,社会の諸制度が激変していますので,こういった時期には,小手先の手法では通用しません。どんな状況になっても大丈夫なように,自分の知力と体力をつけて対応することが重要です。ぜひゼミナールに積極的に『参加』し,これらを身に付けましょう。
 ゼミナールのテーマは,「地球環境問題と環境経営」ですが,このテーマは最近の社会問題としてだけでなく,経営学にとっても重要な問題となっています。なぜならば地球環境問題は,20世紀の企業活動がその大きな原因となっていると同時にその解決には今後の企業活動のあり方が重要な鍵を握っているからです。20世紀は,大企業の時代でした。大企業は,大量生産・大量流通・大量消費をあらゆる手段で推し進め,『大衆消費社会』を生み出しました。我々の身の回りに商品が溢れるようにあり,買うときにどれを買っていいのか迷ったり,つい使う必要の無いものを買ってしまい,置き場所に困るなどの経験をしたことがあると思います。この様なことが大きな原因となり,その結果,大量浪費・大量廃棄がおこなわれ,ついに地球や人類の存続自体が危ぶまれる地球環境問題を引き起こしました。
 地球環境問題には,いろいろの問題がありますが,以前の公害と違っていることは,公害と比較して原因が特定しにくく,環境破壊に気がつくのが遅れることです。また原因が複合的で,予防策が取りにくいこと,さらに被害者と加害者の立場もはっきりしないことが多いという厄介な問題なのです。例えば,多くの人が(学生諸君も含む)は,地球環境の悪化によって,花粉症とかアトピーなどの被害者となりますが,同時に車に乗って排気ガスを出したり,日々の生活でエネルギーを使うことで地球温暖化の加害者にもなっているのです。
 ですから私たちも自分の生活スタイルをもう一度考え直す必要があります。しかし地球環境問題解決のためには,その主要な原因である企業の今後のあり方が非常に重要です。それでこれからの企業は,環境経営に取り組まなければ,社会の中で受け入れてもらえず,企業経営を止めなければならなくなります。良い例が,輸出です。相手国の環境基準を守らなければ,企業が造った商品を輸入してもらえません。国際的な環境基準として「ISO・14001」がありますが,これを企業が取らないとヨーロッパなどでは,企業は取引の相手にしてもらえません。それゆえこれは「ビジネス・パスポート」とも呼ばれています。国内でも最近のほとんどの企業が,ホーム・ページに『環境報告書』を載せて,環境にやさしい企業のイメージを宣伝しています。
 ところで環境経営は,単なる企業の上に書いたような,環境対策だけを言うわけではありません。例えばISOを取るためには,企業は,企業の全体を細部にわたり見直さなければなりませんので,企業の戦略や組織を再検討し,改善するという企業経営の本来のあり方にそのまま役立ちます。また環境経営のなかから,市場が世界的に拡大している(経済成長著しい中国なども今後環境を重視する政策に転換しました)環境ビジネスの芽を発見し,大きなビジネス・チャンスにすることもできます。
 環境ビジネスは大きく拡大していますから,それらに関連する企業活動も拡大し,そこでの仕事も増えています。それゆえ,諸君の生来の進路としても環境関連の仕事や環境ビジネスは有望です。ぜひこの新しい分野にチャレンジしてみたらいいと思います。


 普段の演習室での報告討論への『参加』も重要ですが,学生諸君が自ら企画したことは出来る限り実行したいと思います。ですから企画のある人にその都度,ゼミ長になって実行してもらいます。ゼミナールで大胆に行動し,失敗することは非常に重要です。社会にでてからは,経済的実害が発生したりしますからなかなか失敗できません。大学でのみいろいろなことを行い失敗することは可能だともいえます。失敗から学ぶことは非常に多いのです。将来失敗しないために必要ですし,将来万一失敗した場合でもどう対応するのかを学べます。これまで,他大学・他のゼミとの交流・コンパ,ボーリング大会,自然観察,工場見学・研修旅行,スキー合宿(これはわがゼミの年中行事となっています,今年はニセコでおこないました)などを行ってきました。
 またもっと深く研究をしたいと大学院に進学を希望する学生が過去多くいました。そのうち1人は,イギリスのビジネス・スクール(経営大学院)に進学してMBA(経営学修士)を取りました。またここ数年は,本学の大学院に進学する学生が出ています。この学生たちには,ゼミ以外の大学院受験のための勉強会も行ってきました。これに参加した学生は,全員大学院に進学しました。ゼミで勉強して,研究に興味を持ったら,是非大学院に進学し,もっと深く研究をしましょう。若い時に頑張ると,後でいろいろ役立ちます。


 2年次・3年次は,テキストを決めて,分担してレジュメを作成し報告してもらい,みんなでじっくり読み,討論をします。また同時に3年次には各自の興味のあるテーマを決めて,それを調べ,深め,報告してもらいます。そして4年次には自分の考えをまとめ,卒業論文を書くことが出来るようにします。





内田 一秀
(うちだ かずひで)

【出身,経歴,趣味など】
1948年,武田信玄,富士山,南アルプス,葡萄,桃,で知られる山梨県甲府市で生まれました。いわゆる団塊の世代です。(現在58歳)18年間を甲府で過ごし,1967年受験に失敗し,進路変更(理科系から)して,唯一合格した京都の同志社大学商学部に入学しました。当時大学は,学園紛争の真只中でキャンパスは封鎖されたり,授業も試験も無く,単位の半分は郵送レポートで取得したように思います。このまま社会に出てもまずいと思い,大学院修士課程(商学研究科)を急遽受験,前期試験では不合格でしたが,辛くも後期試験で合格しました。博士課程の入学試験でまたまた不合格になりましたが,明治大学の博士課程(経営学研究科)に辛うじて合格,外部者にも門を開いてくれた寛大な明治大学には,今でも感謝しています。さて博士課程は3年で終わりましたが,なかなか研究職に就職できず,3年間博士課程に籍を置きました(オーバー・ドクター)。いいかげんいやになり数えていませんが,10回以上就職試験に落ちました。私の人生は,節目節目で不合格と進路変更の歴史だったと思いますが,これで鍛えられた面もあると思います。最後でまた進路変更かと思いましたが,1980年に沖縄大学に合格しました。生まれて初めて飛行機に乗り,沖縄に行きました。沖縄は,人も気候も食べ物も非常に良いところでしたが,田舎者の私には,ほとんど外国でした。沖縄で暮らして,受けたカルチャー・ショックは大きなものでしたが,今までの自分をあらゆる意味で棚卸しできて本当に良かったと思います。
 3年間,沖縄大学に勤務した後,縁あって1983年に本学で採用してもらいました。最初の担当科目は,経営管理論でしたが,その後賃金管理論も担当するようになりました。本学に来てあっという間に20年が過ぎてしまいました。その間,札幌学院大学,北星学園大学,放送大学の非常勤講師をさせてもらいました。北海道も非常に良いところです。特に趣味でゲレンデ・スキー,クロスカントリー・スキーが身近に出来ることは何よりです。

【モットー】
 「良心を手腕に運用する」です。これは新島襄が言ったといわれていますが,志し無しの技術は良くないが,技術も無い観念的志しも良くない,両者をもって対処すべきであると勝手に解釈しています。ですが実際はなかなかうまく行きません。

【研究テーマ】
 アメリカ経営学研究から始め,それを深めるための「アメリカの企業内労使関係」です。19世紀末から始め,最近は1930年代を対象にしています。いまや社会科学の研究も集団研究の時代になりましたので,全国の仲間と共同研究をしています。
【社会活動,社会貢献,対外活動など】
 札幌大学では,過去ほとんどの委員をしましたが,現在は,経営学科長をしています。学会では,労務理論学会の理事をしています。また経営学会,経営史学会,社会政策学会の会員です。そのほかには北海道私学助成推進協議会の会長をしました。
 ここ3年間で,4つの高校の出前授業をしました。