大学とは、教員と学生がともに学びあうところ |
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![]() 岩崎です。まず、簡単な自己紹介をしましょう。生まれは横浜、育ちは東京です。大学まで東京、大学院を仙台でおくり、30年前に札幌にきました。札幌での生活そして札幌大学がすっかり気に入っています。 |
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趣味は、登山・散策、庭いじり(家庭菜園のまねごと)、音楽鑑賞(クラシック中心だがジャンルは問わず)、雑学の濫読、学生と飲むこと等々です。性格は、いたってのんびり屋のプラス思考、「明日できることは今日するな」を地でいっています。札幌大学では農業経済論と大学院で北海道農業経済特論、そしてゼミナ−ルを担当しています。 大学とは、教員と学生がともに学ぶところです。教員も学生に学び、学生も研究する、それが本当の大学だと思っています。 |
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![]() まず、ゼミナ−ルの話です。 私はゼミナ−ル活動こそ「大学の命」であると思い、実践しています。ゼミこそ、学生が最も主体的に取り組める場であるからです。そこでは、研究の仕方、討論の仕方、司会の仕方等々学問を通じて社会的、人間的に鍛えられます。ゼミは一種の共同体、家族だと思っています。そしてゼミで培われた人間関係は生涯心の支えになります。岩崎ゼミには同窓会があり、卒業後も同世代同士はもちろん、世代を超えた人間関係のつながりが強いものがあります。 |
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岩崎ゼミの特徴は、毎年、北海道の農業・地域、日本人の「食と農」に関する調査・研究を行い、それを発表(研究誌等)していることです。今までのテ−マは、「米・牛肉の自由化」、「北海道の町おこし、村おこし」、「農産物の安全性について」、「北海道の有機農業」、「新規参入農業」、「農業生産法人」「食品表示」「学校給食」「中食」「食料自給率」等です。 | |
これらの調査では必ずフィ−ルドワ−ク行ってきました。農村調査・実態調査では、農民の楽しみ・苦しみ、現実社会の矛盾・問題点をじかに知ることができます。岩崎ゼミのモット−は「よく学び、よく遊べ、よく飲め」−学ぶのも遊ぶのも、そして飲むのも(笑)全力投球です。 |
![]() 次に研究についてです。私の研究は@農業問題論A北海道農業論B軽種馬生産の研究、が主なものです。 @は私のいわばライフワ−クです。今日の「農業の国際化」の本質を歴史的・理論的に解明したいと思っています。しかし、研究はなかなか進まないというのが正直なところです。 Aに関しては、ゼミ生と一緒の研究のほか、今年、北海道農業論の集大成である岩崎 徹・牛山敬二編『北海道農業の地帯構成と構造変動』(北海道大学出版会)を出版しました。 Bに関しては『馬産地80話―日高から見た日本競馬―』(北海道大学出版会)を最近上梓しました。軽種馬研究は、ゼミ生が卒論に書きたいと言ったので日高地方に一緒に出かけたのが契機です。 |
![]() 次の話は、研究・教育の内容に関して私が日ごろ考えていることです。 みなさんは、今日の日本人の食生活は「本当に豊か」だと思いますか?たしかに、都会では24時間コンビニで食品が購入できますし、春夏秋冬いつでも野菜や果物が手に入ります(逆に旬のものがなくなり、季節感がなくなりましたが)。また、インスタント、レトルト食品が増え、「便利」にはなりました。 しかし、それは、味と栄養と安全性を犠牲にして成り立っているとは思いませんか。子供のアトピ−性皮膚炎はじめとする皮膚病や骨折が増え、大人も子供も様々な成人病(生活習慣病)やガンが増えていますが、日本人の食生活と大いに関係ありそうです。食料が遠隔地から運ばれ、極度に商品化されていますから、農薬、化学肥料、石油、ホルモン剤、食品添加物、化学調味料、抗生物質がたくさん投入され冷凍・保存技術、品質の画一化、過剰包装が進んでいます。しかも、1995年に成立したWTO(世界貿易機構)体制は、安全基準も国際化(甘い基準に合わせる)するというのです。 狂牛病やO−157、そして今も時々発生しているサルモネラ中毒、コレラも、全て輸入食品・輸入飼料の増大と関係あります。遺伝子組み替え食品は、もう日本に輸入され私たちの口に入っています。さらに、日本は飽食といわれていますが、地球上では8億人の人が飢えに苦しみ、1日5万人の人が餓死しているといわれています。 人間は、資本主義以前は自然・地域と共に生きてきました。それぞれの民族や地域は、それぞれの民族や地域の食文化をもってきました。農業は本来的に民族的、地域的なものであり、人間の身体と農業形態は一体のものでした。そのことを、東洋社会では、「医食同源」とか「身土不二」という言葉で言い表してきました。私の恩師、大谷省三氏は、食と農の同一性を強調するため、「食農同根」という言葉を用いました。日本は、今日では「食と農」が極度に分離しています。そこに人間生活の、あるいは環境破壊の根源があると、私は思います。 このことの解明は同時に、「本当の豊かさとは何か?」という問いでもあります。みなさんも一緒に考えてみませんか? |
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1943年 横浜市に生まれる。 | ■日本農業経済学会 |
1967年 東京農工大学農学部農学科卒業 | ■経済理論学会 |
1970年 東京農工大学大学院農学研究科農学専攻修士課程修了 | ■北海道農業経済学会 |
1976年 東北大学大学院農学研究科農学専攻博士課程修了。農学博士 | ■農業問題研究学会 |
1976年 札幌大学経済学部専任講師 | ![]() |
1979年 札幌大学経済学部助教授 | ■北海道地域農業研究所 理事 |
1984年 札幌大学経済学部教授 現在に至る | ■北海道農業研究会 会長 (1996年〜2002年) |
■札幌大学経済学部長(1994年〜1996年) | |
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■『北海道農業の地帯構成と構造変動』(編著)岩崎 徹・牛山敬二編著、北大出版会、2006年 |
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■『馬産地80話―日高から見た日本競馬―』北大出版会、2005年 |
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■『農業問題 学び教えられ』北海道共同組合通信社、2003年 |
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■『競馬社会をみると、日本経済がみえてくる─国際化と馬産地の課題─』源草社,2002年 |
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■『ロシア極東の農業改革』(共著)大沼盛男・佐々木洋・山村理人編、御茶ノ水書房,2000年 |
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■『農業雇用と地域労働市場─北海道農業の雇用問題─』(編著)北海道大学図書刊行会,1997年 |
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■『解体する食糧自給政策』(共著)河相一成編著、日本経済評論社,1996年 |
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■『経済構造調整下の北海道農業』(共著)七戸長生・牛山敬二編、北海道大学図書刊行会,1991年 |
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■『転換期の協同組合』(共著)飯島源次郎編、筑波書房,1991年 |