トルストイТолстой, Л. Н. (1828-1910)

 

 トゥーラ郊外のヤースナヤ・パリャーナに広大な領地を持つ公爵の家に生まれる。学生時代は酒宴と舞踏会に明け暮れ(コンパとディスコ通いですな)、落第を繰り返す。親のおかげで金もあり身分もあるから、それでも全然困らない。冒険とロマンを求めてコーカサスの山岳民族との戦いに身を投じても、生まれつき頑強な体が幸いしてここでも全く不自由なし。で、暇にまかせて小説でも書いてみる。と、これまた大成功。と、何一つ不自由ない生活を送る。うらやましい限りである。

ところが、金も身分も健康も才能もあるトルストイ、ふと、立ち止まって考えた。「人生とは何か?」。いわゆる「トルストイの回心」である。以後、暴力を否定し、国家権力や教会も認めず、額に汗する素朴な生活を送る。が、それは理想。実際には家庭内では奥様にいびられ続け、いたたまれなくなって(よ〜く分かる、その気持ち)家出し、最後は田舎の駅の待合室でたおれる。

ヤースナヤ・パリャーナの森の中、小さな土盛りがある。これが彼の墓。墓石もない。不自然に芝生が貼り付けてあるが、これは後世の作為であろう。いささか野暮である。

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