ネットで募る集団自殺について

1年 高木 香苗

 

今、世界に冠たる長寿大国である日本が同時に世界有数の自殺大国になってきている。今やその原因は、不況イコール自殺の増加という単純なものではないようだ。自殺は、経済や政治、公共投資や福祉政策とは直接つながらないことが多い。それは、心の問題であり、本人以外には理解できないことなのである。このことを思い知らされる事件が起きている。

 ここ最近、見ず知らずのもの同士がインターネットの自殺サイトで誘い合い集団自殺をするというのが起こっている。東京・奥多摩町で女性4人が自殺未遂を起こした事件、神奈川では、女性2人が自殺を図った事件、埼玉・皆野では男性4人女性3人が集団自殺を図った事件が起きている。なぜ、集団自殺が起きるのか。それは、ネット上の人間関係が短時間で感情的に盛り上がりやすく、自殺の話題だけでつながっているので、お互いに後戻りができない状態になるからだ、と分析されている。             そのような現状の一方で、同じネットを使った自殺予防サイトがある、その目的は、本音を語り合い、自殺を思いとどまらせようという試みからだ。中高年は誰にも相談せず1人で自殺を覚悟することが多い。しかし、若者は心の奥底で生きたいと願っているのだ。ネットで自殺したい気持ちを語ることは悪いことではない。「苦しいよ」と明かせる場所があること、自分が1人ぼっちじゃないんだということを気づかせることが大切なのである。このサイトには毎日、2〜3000件のアクセスがある。

 歌人の斉藤茂吉(1882〜1953)は、大友家持(717?〜785)の短歌の1つに使っていた「心」の意味を「情」の意味として使っていた、と述べている。すなわち「情報」という言葉は、人の「心」を報ずることなのである。しかし、私たちは今まで誰かに、自分の本当の気持ちを伝えてきただろうか。喜びを伝えることは容易だが、しかし、悲しみや怒りや不安を相手に伝えることは難しい。もし、弱みであるそれらを表に出せば、競争社会では生きていけない。

 それゆえに、私たちは心に鍵をかけて自分を守ろうとする。しかし、もし他の人に伝えていれば、自分だけではなく、皆同じ気持ちを持っているのだとわかり安心できるだろう。では、どうすればきちんと相手に気持ちを伝えることができるのだろうか。それは、自ら自分の話に耳を傾けてくれる人を探すことだろう。ネットに頼るのではなく、1対1の人間同士で語り合える場所を作るということだ。もちろん、積極的な態度が大切である、しかし無理して深いレベルで他の人と話す機会を作らなくてもよい。ただ、常にそのことを胸に留めていれば、必ずそういう人に巡り合うことができるだろう。

 作家の五木寛之氏は、今の時代を次のように述べている。「私たちは平和の中に住んでいる・・・しかし本当に平和なのだろうか。1年間に何万人もの自殺者が出るということは平和とはいえないのだ。ある意味ではこれは戦争である。それは心の戦争であり、インナー・ウォーという言葉がピッタリと当てはまるかもしれない」。また、自殺が起きる原因は何かという問いに、「こころが乾いてしまっているから人間の命が軽くなってしまう。軽い命は簡単に捨てることができるし、奪うこともできる。だから、自殺者の増加と凶悪犯罪の増加が並行して起こっているのだ」と、述べている。

 人生の目的とはなんだろうか。五木寛之氏は、<人生の目的とは「自分の人生の目的」を探すことである>と述べている。世界中の誰とも違う自分だけの「生きる意味」を見出すことなのである。その目的は生きている間には、なかなか見つからないかもしれない。しかし、生き続けていてこそ、目的が明らかになるのである。私たちは、生きなければならないのである。私たちは日常生活の中にある、小さな喜びを見つけていくことが大切なのである。そこから、たとえかすかではあっても力を得ることができるのではないだろうか。

 
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