<!--This file created 07.5.23 6:38 PM by Claris Home Page version 2.0J--><HTML><HEAD>   <TITLE>yoshida47j</TITLE>   <META NAME=GENERATOR CONTENT="Claris Home Page 2.0J">   <META HTTP-EQUIV="Content-Type" CONTENT="text/html;CHARSET=x-sjis">   <X-SAS-WINDOW TOP=68 BOTTOM=768 LEFT=8 RIGHT=538></HEAD><BODY BGCOLOR="#FFFFFF"><P><CENTER><B><FONT SIZE="+2">エッセイ：</FONT></B></CENTER></P><P><CENTER><B><FONT SIZE="+2">60歳になる父への手紙</FONT></B></CENTER></P><P ALIGN=RIGHT><FONT SIZE="+1">２年　吉田　文恵</FONT></P><P>　</P><P>私の父が今年で還暦を迎える。本人が一番信じられないと思うが、父が60歳になるなんて、実感が沸かない。今は私が離れて暮らしているために、私が実家に帰らない限り、会うことはない。しかし、実家に帰って父に会うたび年をとってきているなぁと実感する。髪は以前よりも白髪が増え、顔や手のしわも多くなった。父が仕事から帰ってきた時の背中を見ると、なんとも言えぬ、疲労感が伝わってくる。</P><P>父は北海道福島町字吉岡で、5人兄弟の3番目として生まれた。私の祖父は体の弱い漁師で、祖母は気の強いはきはきとした人だった。話を聞くところによると、決して裕福な家庭ではなかったようだ。父は高校を卒業すると、電気系の会社に就職した。丁度、青函トンネルの工事が行われていた時期で、地元の吉岡で仕事をしていた。父のアルバムに当時の写真が残っていた。蒸し暑そうなトンネルの中で、ヘルメットをかぶり、ランニングシャツ姿で笑顔を見せている。今の私と同じ年齢で汗水を流して働いていた。古いアルバムには当時の旅行の写真が何枚もあった。ほとんどが山や海で撮られた写真だ。父は自然が大好きである。今も春や夏になると山へ行き、海へ行く。夏に家では小さいながらも家庭菜園をやっている。本当に冬の期間はやることがなく可哀想になってくる。自然が好きだ。そして猫が好きである。同じくアルバムの中には可愛らしい三毛猫の写真が何枚もあった。父は少ない給料から毎日牛乳をとって猫にもやっていた、と言っていた。</P><P>父と4歳下の母が結婚したのは父が30歳の時である。父も母も馴れ初めや詳しいことを教えてくれないが、アルバムには幸せそうな若い二人の写真が何枚も残っている。二人はまだ兄も私も生まれていない時に車で北海道中を旅行したそうだ。今でこそ、滅多に旅行に行かない両親だが、いろんな場所に行くのが好きなようだ。父が35歳の時に兄が生まれ、そして、39歳の時に私が生まれた。私が生まれた時は函館に引っ越していたために、父はずっと青函トンネルの仕事の為に出張していた。私が生まれた瞬間もトンネルにおり、生まれてから1ヶ月も会わなかったそうだが、父はいつも胸ポケットに私の写真を入れていたらしい。</P><P>私が物心ついてからの父は本当に厳しいという印象しかなかった。無口で、亭主関白で、いつもタバコを吸っていて。とても怖かった。今思えば仕事のストレスであったのだろうが、よく母に当たっていた。そんな父を見て私は父のような人とは結婚したくないと思っていた。</P><P>私が大きくなるにつれて父を見る目が変わってきた。嫌悪感が強かったのだが、それが尊敬に変わってきた。父の仕事で、夜間の列車が少ない時間に線路で電気系統の工事をするというものもあるのだが、それを夏だけではなく、冬もやる。この寒さの厳しい北海道で、吹雪いていてもやるのだ。段々白髪も増えてきて、疲れた表情をしている父を見ると胸が痛む。今でもこの夜間の仕事はたまにある。本当に風邪を引いたり、どこか悪くしないか心配になる。</P><P>父は60歳になるが、定年退職はしない。退職は何年先になるかわからないが、今は北海道新幹線事業のために頑張っている。本当ならもう休ませてあげたいと思う。しかし、一方で、父のような腕の良い技術者を引退させるのはもったいないとも思う。高校を卒業してから42年間、電気系統一筋でやってきて、会社内でも父のようなキャリアのある人も多くはない。今は大した病気もないし、健康である。しかし仕事が終わって帰宅した父の姿には寂しさを感じる。引退して欲しい気もあるし、やめないで欲しい気もあってとても複雑だ。</P><P>父は私のやりたいことをなんでもやらせてくれている。習い事もさせてくれたし、外国も行かせてくれた。大学にだって通わせてもらっている。よく考えると、父がしてこなかったことを私はさせてもらっている。父は今の私の年齢ではもう社会に出て働いていた。それなのに、わがままを聞いてもらって、申し訳なく思えてくる。しかし、あと2年だけ自分のわがままを聞いて欲しい。あと2年たったら、今までもらった恩恵を、少しずつでも返していきたい。団塊という世代に生まれて、必死に家族のために働いて、もう体も心も疲れているだろう。でも、まだまだ元気で健康で母と仲良く長生きして欲しい。</P><P><CENTER><HR><U><FONTCOLOR="#0000AF"><A HREF="../47english/topics47">Topics</A></FONT><FONTCOLOR="#0000AF"><BR></FONT><FONTCOLOR="#0000AF"><A HREF="../index.html">Index</A></FONT></U></CENTER></P><P>　</P></BODY></HTML>