「英語を一生懸命勉強しても完全になるまで使おうとしないのは、
人生をいかに生きるかの答えがでるまで息をしないのと同じくらい、
バカバカしい話である」と書いたのは『アジアをつなぐ英語』の著者、
本名信行です。日本人特有の完璧主義なのか、ささやかなミスも許さない
英語信仰の強い英語教育の結果なのか…確かにうなづける話ですよね。

私が企画・監修する「国際コミュニケーション」「異文化コミュニケーション」
「英語コミュニケーション」の授業は、主として、日本語がわかる
ネーティブ・スピーカーやバイリンガルの先生が担当します。そこでは、
英語を「母国語が異なる人との意思疎通や異文化相互理解の道具」と
位置付けています。

また、言葉は、それを話す人々の文化や生活習慣、歴史とともにある
立体的なものであり、決してテキストや問題用紙の上に並ぶ平面的なもの
ではないのです。授業では、先生たちがゼスチャーを交えた分かりやすい
英語を使って、母国の生活習慣や自分の異文化体験のエピソードも
聞かせてくれます。また、ビデオを多く使って、
多面的な言語・文化体験ができるようにします。
    
授業の中の自由会話の時間にも、テーマと例文だけをきめて、
細かいミスを気にせずに、とにかく何か言おうという発話訓練をします。
始めは何をどう言っていいのか分からず戸惑っていても、
次第に長年の呪縛から開放され、会話話を楽しむようになってくるでしょう。

インターネット時代、インフォーメーション時代の世界標準語として、
地球上で十億人が英語を何らかのかたちで使っているというのを
聞いたことがあると思います。
    一説によれば、英語を母国語とする人口、公用語とする人口、
国際語として使用する人口の比率は「三対十対七」であるといいます。
この概算によれば、世界人口の三分の一が、何らかのレベルで英語を
コミュニケーションの道具として使用していることになるのです。

国際ビジネス交渉や会議、国際交流の現場や、世界の最新情報や
異文化を扱ったテレビ番組やインターネット上では、完璧ではなくても
パワフルな非母国語話者の英語も多く登場します。
    
アメリカ文化の香りがする米語、オーストラリア文化の香りがする
オージー英語があるように、アジア各国の文化の香りがする英語が
あっていいのです。英語はもはやEnglishの時代ではなく
「World Englishes」の時代なのですから。

様々な母国語の人々と出会ったとき、異文化を尊重しながら、
沈黙せずに交流できるキミたちであってほしいのです。



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