ストレスの原因

「ストレスを感じる原因 (複数回答可)」として最も該当数が多かった項目は、
15名が指摘した「過酷な勤務条件」の項目である。
内容としては「アテンドや視察や工場での通訳で、
食事が会食になっている場合は、食事をとることができない」など
「食事に関する原因」が観光・アテンド通訳、ビジネス通訳の現場に多い。
会食では、通訳1名に対して数名から多い時には二十数名が、
交代で、あるいは同時に話をするため、
ほとんど出された食事に手をつける暇もないという経験が筆者自身もある。
また、会議・講演通訳の現場でも同様の状況がおこりうるのみならず、
「主催者が通訳者の分の食事を用意しておらず、
遠くまで出かけなければならなかったため、
午後の発表者との打ち合わせができなかった」などの例がある。

同様に多い回答としては、「休憩時間がないこと」
あるいは「不十分であること」があげられる。
ペアまたはチームによる交代での作業である同時通訳に関する指摘はなかったが
テーマによっては同時通訳に準ずる集中力が要求されるウィスパリング通訳は、
1人で行うことも多いため非常にストレス度の高いものになりかねない。

以上の2点は、エージェントやコーディネーターを介している場合は、
あらかじめ交渉してもらう、あるいは、
フリー通訳者がクライアントから直接依頼を受けて
電話やメールなどで内容確認する際に、直接交渉できれば、
ある程度解決する問題でもある。
特に経験5年以下の通訳者にこの指摘の割合が多かったため、
ベテラン通訳者は、
事前通あわせやその場で休憩をリクエストできる割合が高いと考えられる。

3点目は「勤務時間および時間帯」に関するもので、
早朝・深夜業務や、夜遅くまでの接待が含まれる。
特に、接待の問題は、アテンド通訳・ビジネス通訳に顕著であり、
主催者側の日本が、通訳者のみならず
外国人ゲストを半強制的に連れて行く場合も指摘されている。
また、「仕事としてではなく」と誘われて自分が拒否すれば
コミュニケーションが成り立たず困るのではないかと、
仕方なく従う」という経験が筆者自身、通訳を始めた30代の頃に何度もあった。
その他、あらかじめ提示した通訳料を後で値切られたる、
あるいは直前にキャンセルしておきながら、キャンセル料を払わないというケースも、
20代、30代の女性通訳者のコメントに見られた。