02-1.警職法による所持品検査
 最高裁昭和53年9月7日第1小法廷判決
 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -   争    点  [1]職務質問に付随して行う所持品検査の許容限度
 [2]捜査・押収等の手続きに違法のある収集証拠物とその証拠能力

 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -  事実の概要   パトカーで警ら中のA巡査、B巡査長の両名は、ホテルオータニ  付近路上に被告人X運転の自動車が停車しており、運転席の右横に  遊び人風の男3、4人がいてXと話をしているのを認めた。   パトカーが後方から近づくと、被告人Xの車はすぐに発進して  ホテルの駐車場に入ろうとした。A巡査は、被告人Xの挙動不審の  行動に加え、同所は覚醒剤事犯や売春事犯の検挙例が多く、被告人  に売春の客引きの疑いがあったので、職務質問することにし、被告  人の車を停止させ、免許証の提示を求めた。(被告人が提示した  免許証は偽造されたものであると、後に警察署で判明)。   続いて、A巡査が車内を観察すると、ヤクザの組の名前と紋の  はいったふくさ様の袋があり、袋の中に賭博道具が入っていた。   また、被告人の態度、青白い顔などからして覚醒剤中毒の疑いも  あったので、職務質問を始めた。   が、被告人に所持品の提示を求めると、「見せる必要はない」と  拒否。A巡査らは応援を要請。A巡査の所持品提示要求に対し、被  告人はしぶしぶポケットから「目薬とちり紙」を取り出しA巡査に  手渡す。   続いて別のポケットの中の物の提示も要求したが、被告人は要求  を拒否。   やむなくA巡査は、「中の物を取り出してみるぞ」と言ってポケ  ットの内に手を入れ、注射針一本と共に「ビニール袋入りの覚醒剤  のような粉末」が入った紙の包みを取り出した。   A巡査は被告人をパトカーに乗せ、その面前で覚醒剤のような  粉末を検査した結果、粉末が覚醒剤であることが判明したため、  被告人を覚醒剤不法所持の現行犯人として逮捕し、本件証拠物を  差し押さえた。   第1審は、覚醒剤は本人の承諾を得ずにポケットを捜索して差し  押さえられたものであって、違法収集証拠であるから証拠能力は  無いと排除し、Xの自白を他の証拠も不充分としてXを無罪とした。  控訴審も1審の判断を支持した。  - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
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