<!--This file created 99.8.8 14:24 by Claris Home Page version 2.0J--><HTML><HEAD>   <TITLE>morita-j-24</TITLE>   <META NAME=GENERATOR CONTENT="Claris Home Page 2.0J">   <META HTTP-EQUIV="Content-Type" CONTENT="text/html;CHARSET=x-sjis">   <X-SAS-WINDOW TOP=42 BOTTOM=757 LEFT=2 RIGHT=532></HEAD><BODY BGCOLOR="#EBEBEB"><P><CENTER><B><FONT SIZE="+2" COLOR="#AF0000">罪と罰</FONT></B></CENTER></P><P ALIGN=RIGHT>３年　森田真衣</P><P>　真っ黒の表紙に、銀色で浮かび上がった“MAGNET・AMYYAMADA”の文字。小説としては、約２年ぶりにもなる山田詠美の最新短編集である。此の本には、９８年から９９年はじめにかけて発表された９つの作品が収められているが、実は私は、単行本になるのを待切れず、文芸誌に掲載される傍から、図書館に通ってコピーしていたので、大半を既に読み終えてはいた。</P><P>　殺人。放火。売春。結婚詐欺。収められた短編それぞれに必ず、“犯罪者”が登場する。表題作『マグネット』は、以前の中学校教師が強制猥褻で逮捕された、と云う記事から始まるのだが、実は其の事件のきっかけは、語り手にあり、作者の得意分野とも云える、少女と教師の性愛を描いたフランス小説的な物語に仕上がっている。世間的に見れば犯す側であるはずの教師が、作品中では少女に犯され、どんどん傷を深めてゆく、と云う具合に、具体的な社会犯罪を題材にしてはいるのだが、作者がテーマとして描き出す“罪と罰”の世界は、其れとは別の、もっと個人的な次元にある。</P><P>　何処かで誰かを殺した人間よりも、自分を傷付けた目の前の人間の方が、はるかに憎いと感じる事実。自分自身が犯罪者になり得る可能性が、無かったとは言い切れないのに、其の時自分と罪人とを隔てたものは何だったのか、と云う問いかけ。自分が犯した罪に対する本当の罰は、法で裁かれることでは無く、我を忘れたと云う罪に対して、自分の内に沸き上がる悔やみ切れない思い、後悔と云う罰である。自分以外の人間が持つ、罪の意識を悟ることは、人間を洗練させる方法の一つだ、と云う作者独自の人生観が生み出す９つの“罪と罰”の物語だ。</P><P>　山田詠美は、１９８５年に『ベッドタイムアイズ』で新人賞を受賞し、芥川賞の候補にも挙げられて、華々しくデビューを飾ったが、其れと同時に、ホステスやヌードモデルとして働いていた経歴が明るみになり、さらにマスコミを騒がすこととなった。１９８７年に直木賞を受賞した後も、米軍基地に勤務する黒人男性との結婚に始まる奔放な言動で公私にわたって話題を振りまいている作家である。其れと云うのも、彼女自身が作品中の登場人物たちと同様に、自分だけの価値基準を持った洗練された大人であることに端を発していると云えよう。彼女の作品が、とりわけ若い女性たちに絶大な支持を受けているのも、読者に対して媚を売らない、彼女の揺るぎ無き自信が、読む者に安心感を与えるせいでは無いだろうか。</P><P>　短編のコピーをひとつずつ読んでいるうちは気付かないが、“罪と罰”の物語として１冊の本にまとめられたことによって、作者の意図する処が、より鮮明に浮かび上がり、其れは、『最後の資料』を読むことで、いっそ明確になった。巻末を飾る此の作品は、捜査一課の刑事だった義弟の死を綴った実話であり、他の８編とは性格を異にするが、死へと歩みを進めていく義弟に対して、何も出来なかった自分を、罪ある者と考える彼女の信条告白であるが故、同じ“罪と罰”の一冊にどうしても加えられなければならなかったのだろう。</P><P>　世間的な常識から遠く隔たった位置に立つ作者が、「他人の目に触れることの無い、個人的な“罪と罰”で結びついた唯一無二の人間関係こそが、生を彩る要素なのだ」と諭す、珠玉の一冊と云える。</P><P><CENTER><HR><A HREF="../24english/24topics.html">Topics</A></CENTER></P><P><CENTER><A HREF="../index.html">Index</A></CENTER></P><P><CENTER>　</CENTER></P></BODY></HTML>