○熊 谷:皆様、こんばんは。先ほど学長から紹介いただいたのですけれども、
本当は「通訳の現場から」というだけのタイトルだったのです。
そして司会の進藤先生に出したところお電話をいただいて
「先生、まだ時間ありますからゆっくり考えていただいて結構です」
というのがきてしまって、ああこれはきっと「現場から」ではちょっと格調が足りないかなと、
ではちょっと大げさにしようかというのでやっぱり年末ですし、
ここで1990年代から2000年を振り返ってしまおうということだったのですけれども
本当は「私なりに振り返って」というのをここでこっそり入れさせていただきます。
そういうことで、お聞きのとおり講演会というほどのかた苦しい格調高いものではなくて
ユリヤ風トークでいきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
「初めまして」の方どのぐらいいらっしゃいますか。
(半分くらい)それ以外の方は前に私の講演を聞いてくださったリピーターということで
万一同じジョークだとか、エピソードが出ても、「ああ知ってる知ってる」とかって
こういうのなしにしてよろしくお願いします。
まず、一般に大学教員というのは現場体験が欠けているとかと
よく批判されるらしいのですけれども
私の場合は現場だけは自信があるということで、
通訳をぽつぽつ頼まれて始めるようになったのが1980年代中ごろですから、
15年前ぐらいですか、OJTからはいりましたが、
それから技術をつけなければということで通訳講座を受講しました。
1990年という年が私にとって記念すべき年で、本格的に同時通訳を始めたというか
小さい子だったら公園デビューというのが最近あるらしいですけれども、
ブースデビューというのですか、それをしたのが1990年だったので、
ついでに振り返ってみようということになりました。
通訳という言葉と通訳者という言葉があるのですけれども、
通訳というのは通訳をする技術とか、そういう役務提供を通訳というのです。
通訳をする人は、通訳者なのですけれども、
例えば運転をする人を運転さんと言わないで運転手さんと言いますね、運転手。
それから弁護をする人は弁護さんと言わないで弁護士というのがあるのに、
なぜか通訳者は通訳さんと言われるのです。
自分でも何かのときに「通訳の熊谷です」とつい言ってしまうのですけれども
実は通訳者なのです。そこが1点。
北海道に何人ぐらいいるのかということは、正確にはわからないのです。
なぜかというと通訳と名乗るだけなら誰でもできるのです。
通訳ガイドというのだけ資格がないとやってはいけないのですけれども、
こちらの方は、例えば一番簡単な方法、名刺をつくる、
通訳者が通訳者と書いて名刺をつくると、もうそれで肩書きだけは通訳者ですと言えば言える。
基準や資格がないので、何人いらっしゃるかわかりませんけれども、
北海道通訳者協会というのができまして、そこには34人ぐらい所属しています。
きょうは、地方の通訳者の視点から見た通訳者現場をご紹介することになります。
それから、会議通訳者というのが同時通訳をするレベルというか
同時通訳をしたり、国際会議やフォーラムやシンポジウムや
講演の通訳をする通訳者なのですけれども、
これもいつも活動しているのが4〜6人くらいということで、
そのうちの1人は東京を中心なので、私を入れなければ3〜5人ぐらい、
私はもちろん札幌大学の教員ですので、
講義に差しさわりのない範囲でお手伝いできるところはすると。
そうしないとやはり二、三人組みで行う仕事なので、
東京から呼ばなければならなくなってしまうのです。
予算のこともあってそういう主催者の場合は
なるべくお手伝いできるところはするようにしています。
それからもう一つ、札幌大学の外国語学部の英語専攻科というのがありまして、
そこで通訳講座を担当しています。
大学を出てから1年間専門に英語を学ぶ学生なのですけれども、
そこで例えばたまたま例を見せるときなどは、
例えば自転車でしたら1回乗るのを覚えたら何年たっても何となく乗れる
というのがあると思うのですけれども、
通訳、特に同時通訳だけは、私程度のレベルでは
いつも訓練していないとできなくなってしまうのです。
北海道ですと、そんなにしょっちゅうあるわけではないので
やはり明日は同時通訳だというとちょっとまた練習したりもしますけれども
一度その技術を失うともう二度とできなくなるのではないかという感じで
そういうこともあって続けています。
今はやはり公共性のあるものを中心にお引き受けしているのですけれども
それにしてもやはり90年代というのはバブルもはじけて、
不況の波がというのがやはり通訳関係の仕事、特にそういう国際会議ですとか
それから国際大会や会議やフェスティバルなどのイベントにも影響していまして
イベントの数も減ったというのもあります。
ここでいうイベントは展示会などの民間のイベントではなく、
主として地方自治体や政府関係機関が組織委員会の中心となって企画するものです。
それから同時通訳を使うと、それだけの予算が取れない、特に東京から呼ぶ予算がない、
それから同時通訳の機械を借りる予算がないから、
今度はFMラジオを使ってかわりに本格的なブースを使わないで、
簡易通訳というのですけれども、そういう簡単なレシーバーとラジオみたいので
ウイスパーリングというひそひそというのとの境目のような、
お金のかからない同時通訳もふえてきました。
では、通訳者の種類は、これはもちろん一人の人がその場その場で
いろいろな呼ばれ方をするということはありますけれども、
まずボランティア通訳者ということで、
札幌国際プラザに登録している外国語ボランティアさんが
この札幌圏では中心だと思うのですけれども、
私も実はそういうプラザみたいなボランティア通訳システムができたときに
登録したのですけれども一度も使ってもらえずに、
ハトのついたバッジと手帳だけを記念にまだ大事に持っていますけれども
そういった思い出があります。
それから次が、通訳ガイドで先ほど言いました国家試験というか試験が必要で
これは歴史ですとか、地理の知識がかなりないといけないということです。
北海道にも何人かいらっしゃいます。
次がイベント通訳そして、ビジネスの通訳者で、これが一般通訳というもので、
あえて一般と言わないで通訳者ということもあります。
イベントとかというのにはどういうのがあるかというのは後でご紹介しますけれども
ビジネス通訳というのは一般的な商談ですとか、商談会議でありますとか、
普通の会社の通訳、そういうことが入ります。
それから、会議通訳者という先ほど言いました会議などで
主として同時通訳をするレベルの通訳ということです。
また放送通訳者は北海道にはいるかどうかわからないのですけれども
NHKのバイリンガル放送、それからCNNなどの衛生放送です。
あれは後でご説明をしますけれども、
ほとんどは予習ができてその場で訳しているのではないそうですが
それにしても大変な緊張感なのだと思います。
時間的な制約もあり、高度の通訳の技術と英語力が要求されます。
たまたま大地震があったり、戦争があったり、それから飛行機が落ちたりと
そういうときはその場で訳しますけれども、後は時差通訳をしているそうです。
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