札幌大学国際文化フォーラム
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それでは、次、知的ロボットシンポジウム。
これがさっき言ったイタリア語だと思って聞いていたら英語だった
という先生のいらっしゃったものなのですけれど
実はこういう知的ロボットいうのは、アリみたいに小さなミニミニマイクロロボットみたいのが
みんなで何かの作業をするような工場用ロボットの研究会だったのです。

こういう特別な分野などは、たとえ二、三時間の同時通訳のためでも
前の日に丸1日とって打ち合わせをしたりします。
そこにイタリアの先生が飛行機に乗りおくれたか何かの事情で着かなかったのです。
前日に着くはずの先生が。
イタリアの先生のだけ打ち合わせがなかったのです。そして原稿もないのです。

次の日に原稿を見たところ「ユークリッド幾何学何だかの3次元何」とが中心で
これは大変だというので打ち合わせに行ったら
「エイッッ、ヴエーリイ−イー・イーズイー・ドントウォーリー」ということで、
その先生にはイージなので、私たちにはイージではないのですけれど
とても簡単ですごくおもしろいから、もう大丈夫だよと10分ぐらいの打ち合わせで追い返されて
壇に立ったら「やっぱり!」だったのです。
「すごく簡単だし、そんなに心配なら僕はゆっくりしゃべってあげるよ」と、
でもそれは「イタリアンスタンダードのゆっくり」だったのですね。
それでイタリアのゆっくりプラスさっき言ったスピーカーモードというのがありますので、
もう超高速で、あんなに早く自分の口が動とは知りませんでした。
でも、何割訳せたのかは不明です。

予習をしたにもかかわらず、そして片仮名で済むものはみんな片仮名で言っても
終わってみたら何の事だったのだろうというのが、コンピューター関係の初期にはありました。
コンピューターの知識は10年前というと、特別な人しかしないような分野で、
このごろは何となく自分も少しはするので、何となくわかりますけれど
初めは全然専門用語もわからない、専門用語の訳を見てもやっぱり片仮名そのままなのです。
「てにをはをつけてくれるだけで、後は僕らが専門用語わかるから」と言われて
「ああそうですか」とてにをはをつけたけれど終わってみたら何の話だったのかあまりわからないと、
そういうのがありました。

突然「シンクパッド」と日本語発音で言われ、
何か台所の流し台のとこに置く、何かこういう板みたいなのかしら?と、
IBMのコンピューターの名前だというのもわからない時代もあったのですけれど
本当にそういうお互い同士はわかっているというのが結構ありましたね。

得意ではない分野はお断りすることができる状況ではない地方通訳の悲しさでしょうか?
本当はプロ通訳者というのは、専門の人と同じだけの知識を持たなければいけないと言われています。
東京のように仕事の多いところでは、通訳だけで生計をたてることができ、
本当の意味でのプロ通訳者がいます。そして得意分野が分かれているらしいのですけれども。
ここではそうもいかないです。

それから、ちょっと戻りますけれど、先ほどロボットの話をしましたが、
レジュメのロボットの下の方にそういった発達障害シンポジウムですとか、
社会福祉シンポジウムというのがありますけれど
これは特に90年代後半になってふえてきたものです。

もう一つ、経済関係では、「クラスター」という言葉が北海道ではやっていますけれど
これも90年代後半、最初は札幌のあたりだけで、
釧路をはじめ北見クラスター創造グループなどが各地にもできて、
各地でそういった同時通訳のようなものを必要とするシンポジウムができるようになりました。
それから北東アジア北太平洋フォーラムというような
例えば地球の見方をちょっと新しい目で見るというか、西洋と東洋だとか、
そういうことではなくて、地球を上からみたり、
北太平洋や環太平洋という単位で考えるものもふえてきました。