札幌大学国際文化フォーラム
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そういうことで、守秘義務があるので
通訳泣かせのとこも言えないことがいっぱいありますけれども
違う角度からの通訳泣かせは、例えばセクハラ。
同時通訳とか会議通訳になってからはなくなりました。
公共性の強い団体の方たちには余りそういう方がいないのですけれども、
若いころ、ビジネス通訳で行くと、「何だ、もっと若い子いないのとか」と
何かホステスさんか、派遣何とか嬢と間違えているのではないかというようなのもあったり
余り物理的なものはないですけれども、
そういう口頭のセクハラというのは結構ありましたね。

それから、レセプションなどで外国人にアテンドしていたときに、
「ちょっとぼうっと立ってないでついでよ」とか、
コンパニオンほどスタイルが良くないと思うのですけれども、
コンパニオンと間違えられてしまったり、そういうのもあります。

それからあと、通訳者泣かせというと、
あの方は英語が達者だからというウワサですか、
例えばある会の偉い方があの方は英語達者だから英語で話すよきっととか
やっぱり英語でスピーチするのです。

達者だったら日本語と英語で両方やってくださるといいのですけれども
片っ方の場合、日本人のそれも偉い方の英語を聞いていて
外国人が何と言っているのだと私にまた聞くのです。
日本人が英語で話しているのに、英語を英語に訳すって失礼ですよね。
ですから「後で言うからわかったふりしていて」とかささやいたり
そういうこともありますし、逐次やパーティの場面ならそれで済むのです。

ようこそだとか、今後もご健勝をとか、そういうことでいいのですけれども
同時通訳で、
いわゆる英語がうまいと言われる日本の偉い方が資料なしで話しをすると
何か言わなければいけないので、時には一体何語なのだろうと思うようなものでも
一生懸命 訳さなければならないこともあるのです。

それから、日本人の英語上手と言われる方も問題なのですけれども
後は世界各地の英語というのがまた悩みの種です。
なまりという言い方はやめようということを後で言いたいと思うのですけれども
何々なまりでアメリカとイギリスの英語だけが正しいとかという時代ではなくて
ワールドイングリッシュの時代だとよく私も言うのですけれども
世界の20億人が英語を使っている。
だから自然といろいろな国の方の英語を訳すことになるのです。

そういうことなのですけれども、
広い心で耳も広くして聞いてもやっぱりわからない英語もあるのです。
例えば「えっ、これ英語だったの、イタリア語かと思ったわ」というようなのもあります。
それからドイツ語と英語みたいな、近い言葉だと話しているうちに、
本人も気づかないうちにドイツ語に移行していってしまうのです。

そういうときはブースの中のボタンを押すと
スピーカーのところに赤ランプがつく いい会議場もあるのですけれども
そうではないときはどんどんどんどんとたたきます。
それでどなたかが気づいてださると、そういうことがありますね。
もう一回言ってくださいと、おねがいしなければならないこともあります。
そのどんどんどんシリーズでいくと早口の人。
ところが前に出て話をする人で、外国に来て話をすると盛り上がってしまうのでしょうか、
大体打ち合わせのときにゆっくり話すよと固く誓う人ほど絶対早くなるのです。
そしていったん演台に上ったスピーカーには3段階しかないのではないかと思うこともあります。
スローというモードはないです、ミディアムもないです。
ファーストか、ファースターか、ファースティスト、
早い、ちょっと早い、すごく早いの3モードになってしまうのです。
早口のときは原稿があれば早口で追いかけることもできますね、
そのとおりやっている人は。もう息する暇もなく。

ただ一番悪いのは、一番通訳者泣かせは
相手が直前に実は原稿を持っているのだと言って、
そして私たちに「じゃこれでね」と直前にぼんとおいていく場合です。
くださればいい方ですけれども、ないときもありますけれども。
最悪は、うちあわせの時間がなく、壇に立ってから実は原稿あるのことがわかる場合です。

日本人のオーガナイザーが、
そんな偉い先生に原稿出せなんて申しわけなくて言えないと言って、
旅行でやっと着いて日本にたどり着いて疲れていらっしゃるから
実は言えなかったなんて言って、
相手は原稿を持っているのにいただかなかったことがたくさんあります。

とにかく最悪なのが、スピーカーが読んでしまう、
私たちは何も持っていない、そういうのがあります。
それで早口だったらもうどうしようもないというので、
後で実例のときにちょっと触れたいと思います。

打ち合わせや事前資料の重要さをきちんと説明するべきであり
それこそが会議成功のカギなのは確かです。
協力してくれないオーガナイザーやコーディネーターのもとでは絶対に仕事をしない
と主張するのが通訳者として正しい態度であることはわかっていますが
首都圏や京阪神地区のように仕事も通訳者も多く自己主張ができる地域と違い、
地方ではさまざまな人間関係や力関係の問題もあり、
なかなかそういうわけにはいかないのが現状です。