04-1.道路交通法違反と過失犯の処罰
最高裁昭和48年4月29日第一小法廷判決
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事実の概要
小道(幅約4.4メートル)からバックで国道(幅約6.1
メートル)に後退によって侵入する際、左右道路の安全を
確認しないで後退、侵入したため、同国道を後退方向に向か
って右から直進してきた普通乗用自動車の左前部を自車の
左前部に衝突させた。
第一審:
道路交通法の故意による安全運転義務違反の罪
(70条・119条1項9号)の成立を認めて、被告
人を罰金5千円に処した。
第二審:
被告人の本件後退行為は、過失によって道路交通法旧
25条の2第1項の「他の車両等の正常な交通を妨害する
おそれがあるときは…後退してはならない」との義務に違反
したものであり、同法70条の故意による安全運転義務違反
の成立を認めた原判決は事実の誤認があるとして原判決を
破棄した。
また、以下の争点について、二審では法が70条の安全
運転義務以外の各種の類型的な危険防止義務につきそれぞれ
過失犯処罰の有無を明確に規定し、かつ、過失犯処罰に規定
を設けると否とにつきその必要性等を十分考慮していて
合理的区別をしていることにかんがみると、類型的義務違反
につき過失犯処罰の規定を設けなかった以上当然それらの
義務違反については一切過失犯を処罰しない法意と解され
るから、本件についても過失犯処罰の規定を適用することは
許されないとしている。
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争 点
道路交通法25条の2第1項の義務違反罪は故意犯であって、
その過失犯を処罰する規定がないことから、本件後退行為の
同法70条の過失犯処罰規定(119条2項・1項9号)を
適用しうるかが問題となる。(第2審はその適用を否定した)
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